先に結論だけ
厄年の女性への贈り物に挙がるのは、長いもの・うろこ模様・七色のものの3つです。寺の門戸厄神(兵庫県西宮市)がこの3つを公式に書き、品としては帯・財布・腕念珠、百貨店はネックレスやスカーフを挙げています。
一方で、神社本庁と、当サイトが開いた10の神社庁は贈り物に触れていません。県史や町誌で記録が集まるのは、33歳の厄年(群馬県は前厄の32歳)に実家の親や兄弟が女性へ贈る帯です。誰が・いつ・何を贈るかを定めた公式の決まりは見つからず、贈らなくても失礼にはなりません。
当サイト(カンナビ)は2026年10月2日に「厄年 女 贈り物」で上位に出る22本を開きました。長いものを書くのは20本、七色は18本、うろこは10本で、出典を示さないものが18本でした。そこで、寺社の公式・百貨店の公式・県史の原文を1つずつ開いて確かめています。
この記事でわかること
- 3つの品の出どころ: 長いもの・うろこ模様・七色を、誰が書いているかで分けました。
- 品目と授与品: ネックレスや財布などの品目と、寺社の授与品の初穂料を表にしています。
- 誰が・いつ贈るか: 4県の記録と、寺社・百貨店の公式の書き方を並べました。
- のし・お返し・男性: 表書きと水引、内祝い、男性へ贈る品を公式の文面で確かめています。
厄年の女性への贈り物は何がよいか|挙がるのは長いもの・うろこ模様・七色
挙がるのは長いもの・うろこ模様・七色のものの3つで、寺の門戸厄神と百貨店の三越伊勢丹が同じ3つを書いています。
相手が厄年かどうかは、数え年の生まれ年で分かります。下の表は本厄の年だけを抜き出したもので、前厄・後厄を含む表は厄年の早見表(令和8年・9年)にあります。
| 本厄の年齢(数え年) | 令和8年(2026年)に本厄 | 令和9年(2027年)に本厄 |
|---|---|---|
| 女性・19歳 | 平成20年(2008年)生まれ | 平成21年(2009年)生まれ |
| 女性・33歳(大厄) | 平成6年(1994年)生まれ | 平成7年(1995年)生まれ |
| 女性・37歳 | 平成2年(1990年)生まれ | 平成3年(1991年)生まれ |
| 女性・61歳(置かない社寺もある) | 昭和41年(1966年)生まれ | 昭和42年(1967年)生まれ |
| 男性・25歳 | 平成14年(2002年)生まれ | 平成15年(2003年)生まれ |
| 男性・42歳(大厄) | 昭和60年(1985年)生まれ | 昭和61年(1986年)生まれ |
| 男性・61歳 | 昭和41年(1966年)生まれ | 昭和42年(1967年)生まれ |
年齢は神社本庁「厄祓い」の「女性が19歳・33歳・37歳(・61歳)」に沿っています。女性の61歳は社寺で扱いが分かれ、その比較は女性の厄年の早見表にまとめました。
寺の門戸厄神は帯・財布・腕念珠を挙げている
門戸厄神東光寺は、女性への厄払いの贈り物として帯・財布・腕念珠と、厄除けのお守りを公式ページで挙げています。
原文は、厄払いの贈り物には「肌身離さず持てる長いものや、うろこ模様や七色のものが良いとされています」「女性の場合には帯、財布、腕念珠など。また厄除けのお守りなどもよいでしょう」です(門戸厄神「厄とは」)。門戸厄神は高野山真言宗の寺で、神社ではありません。同じページには「女性はうろこ模様や七色のものを身につけると良いなど、さまざまな言い伝えもあります」ともあり、寺自身が言い伝えとして紹介しています。
神社本庁と10の神社庁は贈り物に触れていない
神社本庁と、当サイトが開いた10の神社庁の厄年のページに、贈り物・長いもの・七色・うろこの語はありませんでした。
開いたのは47都道府県のうち、東京・北海道・福岡・宮城・長野・兵庫・大阪・神奈川・愛知・京都の10庁です(2026年10月2日)。書かれているのは年齢と数え年、厄祓いを受けることまでで、大阪・神奈川・愛知は表だけ、京都は厄年のページが見当たりませんでした。寺社では、川崎大師・西新井大師・佐野厄よけ大師・寒川神社・八坂神社・岡寺・あびこ観音・立木観音・成田山新勝寺・妙法寺・日吉大社・城南宮の12か所も、厄年や授与品のページに贈り物の記載がありませんでした。神社で書いているのは、うろこ模様の多井畑厄除八幡宮と、七色の石清水八幡宮です。
贈らなくても失礼にはならない
厄年の人へ贈り物をする決まりを書いた公式は見つからず、三越伊勢丹も厄除けの品は必須ではないと書いています。
三越伊勢丹の解説は「厄除けの品は必須ではありません」と見出しに立て、贈り物としての厄除けは相手の安全と安心を願う心を表すもの、と説明しています(三越伊勢丹「厄除けの品とは?」)。厄年の人が気にしていないなら、品物を用意しなくてもかまいません。気にしている相手には、お守りを添える、厄払いに付き添うといった形もあります。
長いもの・うろこ模様・七色の意味と、記録があるかどうか
県史や町誌に記録があるのは長いもの(帯)とうろこ模様で、七色は寺社の授与品と百貨店の説明にだけ出てきます。
| 品 | 県史・町誌・辞典 | 寺の公式 | 神社の公式 | 百貨店の公式 |
|---|---|---|---|---|
| 長いもの | 帯を贈る記録が愛媛・群馬・秋田・福岡の4県にある | 門戸厄神「肌身離さず持てる長いもの」 | 開いた範囲に記載なし | 三越伊勢丹 |
| うろこ模様 | 日本大百科全書、愛媛県久万町、群馬県千代田村 | 門戸厄神 | 多井畑厄除八幡宮 | 三越伊勢丹(鱗模様の小物) |
| 七色のもの | 見つからない | 門戸厄神(七色房御守ほか) | 石清水八幡宮(七色守) | 三越伊勢丹・阪急うめだ本店 |
長いもの|帯を贈る記録が4県にある
長いものは、厄年の女性に実家が帯を贈る記録が愛媛・群馬・秋田・福岡の4県にあり、理由は長生きの願いです。
『愛媛県史』は久万町の例として「長いものを贈るのは『長生きしてほしい』という願いがこめられているのである」と書き、秋田県の『鹿角市史』も「帯は長いので長生きに通じる」としています(愛媛県史 民俗 下/鹿角市史 第4巻)。愛媛県の『中山町誌』は「長い物は長生きするという願いをこめて贈ったものと考えられる」と、書き手の推し量りとして書いています(中山町誌)。4県の原文を並べた検証は厄年にやってはいけないことで行っています。
うろこ模様|辞典は「再生」と説明し、愛媛と群馬に帯の記録がある
うろこ模様は日本大百科全書が脱皮と再生の意味だと説明し、愛媛県と群馬県にうろこ模様の帯を贈る記録があります。
日本大百科全書は、女性は鱗模様の衣類を身に着けるものだといって三角形の連続模様の着物や帯をつくることもあったとし、「鱗模様は蛇や蝶を連想して脱皮を表し、再生を意味するもの」と書いています(コトバンク「厄年」)。辞典の言葉は「再生」で、「厄除け」ではありません。鱗文を扱う辞典と博物館の解説7件を開いても、書かれているのは蛇や龍の鱗の見立てと、能『道成寺』の衣装まででした(文化遺産オンライン)。
神社では、多井畑厄除八幡宮(神戸市)が厄年の過ごし方として「うろこ模様のものを身につけると良い。」と書いています(多井畑厄除八幡宮「厄年とは」)。寺の門戸厄神と同じく、理由までは書いていません。雑誌では家庭画報.comが、三角は魔よけや厄よけの意味で使われるようになり、京都には女性の33歳の厄年に鱗文様の長襦袢を着る習慣が残る、と紹介しています(家庭画報.com「鱗」)。これを裏付ける県史や町誌は、当サイトが探した範囲では見つかっていません。
七色|寺社の授与品にはあるが、辞典と県史には無い
七色は門戸厄神と石清水八幡宮の授与品に出てきますが、厄年の贈り物として書いた辞典・県史は見つかりませんでした。
石清水八幡宮(京都府八幡市)は七色守の説明に「昔から七色の物を身に着けると厄除になると言われています。」と書いています(石清水八幡宮「授与品」)。身に着ける物としての説明で、贈り物によいとは書いていません。贈り物によいと書くのは寺の門戸厄神で、七色房御守に「厄除けには七色のものが最適とされており、贈り物にもよいでしょう。」と添えています(門戸厄神「お守り・祈念品」)。
由来を説明するのは、茨城県の寺・村松虚空蔵尊のブログです。仁王般若経の「七難即滅七福即生」が七福神の信仰に置き換わったという説を、「諸説あるものの」と断って紹介しています(村松虚空蔵尊「七色の由来」)。辞典で辿れるのは、七難即滅七福即生が仁王経に出る語で、七福神はその説に基づくといわれる、という所までです(コトバンク「七福神」)。そこから七色の品や厄年へつなぐ記述は、辞典にも県史にもありませんでした。国立国会図書館のレファレンス協同データベースで「厄年 七色」を検索した結果も0件です。
女性への贈り物を品目で選ぶ|ネックレス・ストール・財布・帯
品目は、身につける長いもの、財布や小物、寺社の授与品の3つに分かれ、どれも公式が挙げた品の中から選べます。
下の表は、寺と百貨店の公式が女性向けに挙げた品を、3つのどれに当たるかで並べたものです。おすすめの順ではありません。
| 品目 | 3つのどれに当たるか | 挙げている所 |
|---|---|---|
| ネックレス | 長いもの | 三越伊勢丹 |
| スカーフ・ショール・ストール | 長いもの | 三越伊勢丹 |
| 帯・組紐 | 長いもの | 門戸厄神(帯)・三越伊勢丹・4県の記録(帯) |
| ベルト | 長いもの | 三越伊勢丹 |
| 財布 | どれにも当たらない(門戸厄神は色つきの財布を形代とする) | 門戸厄神・三越伊勢丹 |
| 定期券入れ・小物入れ | 柄で選ぶ(うろこ模様など) | 三越伊勢丹 |
| 青海波・鮫小紋・江戸小紋・鱗模様の小物 | うろこ模様 | 三越伊勢丹 |
| 天然石のブレスレット・腕念珠 | 七色(門戸厄神の腕念珠は七色の房・七色の天然石) | 三越伊勢丹・門戸厄神 |
| 厄除けのお守り | ― | 門戸厄神・三越伊勢丹(品に添える) |
身につける長いもの|ネックレス・スカーフ・ストール
ネックレスやスカーフ、ショールは、三越伊勢丹が女性向けの厄除けの品として挙げている長いものです。
三越伊勢丹のしきたりの解説は、女性向けに「ベルト、スカーフ、ネックレス、帯、組紐」を並べています(三越伊勢丹「厄年」)。県史に出てくる長いものは帯ですが、帯を締める機会が少ない相手には、同じ長いものとして首に巻く品や身につける品が選ばれています。ネックレスを寺社の公式が挙げている例は、当サイトが開いた範囲にはありませんでした。三越伊勢丹は、スカーフやネックレスは普段使いしやすい品だと説明しています。
財布・小物と、うろこ模様や青海波の柄もの
財布は寺の門戸厄神と三越伊勢丹の両方が挙げ、柄で選ぶなら鱗模様や青海波の小物を三越伊勢丹が挙げています。
門戸厄神は「厄年には自分の身の回りのものを形式(かたしろ)にし、厄を払います。形式には女性は色つきの財布、男性は火箸などの金物やベルトなどの長いものが適しています。」と書いています。財布は長いものでも七色でもなく、厄を移す身代わりという扱いです。三越伊勢丹は「青海波、鮫小紋、江戸小紋などの細かい染模様、鱗模様などをあしらった小物入れや長いもの」を挙げています。
寺社の授与品を贈る|七色のお守りは800円から
寺社の授与品では、門戸厄神の七色房御守が800円、石清水八幡宮の七色守が1,000円で、財布や腕念珠もあります。
| 寺社 | 寺/神社 | 授与品 | 初穂料 | 公式の説明 |
|---|---|---|---|---|
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除 七色房御守 | 800円 | 「厄除けには七色のものが最適とされており、贈り物にもよいでしょう。」 |
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除財布(ガマ・半・長) | 4,000円・5,000円・10,000円 | 「厄払いの贈り物に適しています。」 |
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除パスケース | 3,000円 | 「厄払いの贈り物に適しています。」 |
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除ベルト | 10,000円 | 「厄除けによい七色の飾りがついており」 |
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除腕念珠 | 2,000円(水晶は6,000円) | 七色の房、または七色の天然石 |
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 厄除火箸 | 2,000円・3,000円・5,000円 | 「男性42才を中心とする本厄の贈り物として最適です。」 |
| 石清水八幡宮 | 神社 | 七色守 | 1,000円 | 「昔から七色の物を身に着けると厄除になると言われています。」 |
| 石清水八幡宮 | 神社 | 特別厄除御神矢 | 5,000円 | 「七色の房を厄年の方の為に特別に調整した厄除けの御神矢。」 |
額はどれも、2026年10月2日に各公式の授与品ページで確かめたものです。授与品は社寺の都合で変わるので、受ける前に公式で確かめてください。この2つは授与品に説明と額が載っていた例で、ほかの社寺より勧めるという意味ではありません。大阪の住吉大社にも、ご利益を「お祓い・厄除」とする七彩守があります(住吉大社のページ)。石清水八幡宮の場所や参拝の情報は石清水八幡宮のページで確かめられます。
19歳・33歳・37歳・61歳で何を贈るか
記録が集まるのは33歳(群馬県は前厄の32歳)で、実家が帯や着物を贈ります。19歳と37歳の記録は確かめられませんでした。
| 年齢(数え年) | 土地 | 誰が | 何を | 資料 |
|---|---|---|---|---|
| 33歳 | 愛媛県 久万町 | 里の親 | ウロコ状模様の帯(無ければヒモでもよい) | 愛媛県史 |
| 33歳 | 愛媛県 吉海町椋名 | 兄弟 | 厄逃れの帯 | 愛媛県史 |
| 33歳 | 愛媛県 宮窪町 | 里方 | 羽織着物 | 愛媛県史 |
| 33歳 | 愛媛県 中山町 | 里 | 帯や着物 | 中山町誌 |
| 32歳(前厄) | 群馬県 千代田村 | 親元 | 厄年帯(うろこの模様がよいという) | 千代田村の民俗(1972年) |
| 33歳 | 秋田県 鹿角市 | 親/兄弟 | 親は長着物・羽織、兄弟は酒・魚・帯・反物 | 鹿角市史 第4巻 |
| 33歳 | 福岡県 遠賀町 | 里方 | 帯 | 遠賀町誌 |
| 61歳 | 愛媛県 小田町 | 里方 | 長着 | 愛媛県史 |
33歳は帯の記録が集まる年
33歳の女性に帯や着物を贈る記録は愛媛・秋田・福岡の3県にあり、群馬県千代田村は前厄の32歳に贈っています。
『愛媛県史』は「久万町では里の親が、ウロコ状模様の帯を贈る。帯がなければヒモでもよいという。この帯をイノチナガメとかヤクノガシの帯という。」と書いています。福岡県の『遠賀町誌』は「女33歳のときは里方から帯を贈ってもらうことにより2月朔日厄をのがれるので厄祝といい、小宴をはる。」としています(遠賀町誌)。どれも昭和の聞き取りの記録で、今も同じ形で続いているかは資料からは分かりません。関西で33歳に親がうろこ柄を贈る、という公的な記録は見つかりませんでした。
19歳・37歳・61歳の記録
61歳は愛媛県小田町に長着を贈る記録があり、19歳と37歳は、原本で確かめられた贈り物の記録がありません。
19歳については、群馬県の民俗調査報告書の検索抜粋に、厄除けに行くときの着物をつくってやったという記述が見えます。ただし当サイトは原本のページを確かめられていないので、表には入れていません。37歳へ贈る記録は、辞典・県史・町誌のどこにも見つかりませんでした。61歳は還暦と重なる年で、東京都神社庁は「還暦はお祝いの年であり、厄年でもあります。」と書いています(東京都神社庁「人生のまつり」)。小田町の長着も、年祝いの贈り物と見分けにくい記録です。記録が無い年齢では、表3の品目から相手の暮らしに合うものを選ぶことになります。年齢ごとの厄年の違いは女性の厄年の早見表で確かめられます。
厄年の贈り物は誰が贈るか|記録では実家の親と兄弟
記録に出てくる贈り手は実家の親と兄弟です。誰が贈るべきかを書いた寺社の公式は、開いた範囲にありませんでした。
親・兄弟から贈る記録
4県の記録では、贈り手は里の親・里方・親元・兄弟で、嫁いだ女性へ実家の側から贈る形になっています。
秋田県の『鹿角市史』は「女の三十三才の時は親兄弟で祝い、親は長着物・羽織など、兄弟は酒・魚のほか帯・反物などを贈った。」と、親と兄弟で品を分けています。群馬県の『千代田村の民俗』(1972年)は「親元から、厄年帯を寄こす」と書きます。実家から贈るという形は4県で共通していました。
夫・友人・義理の親が贈る、自分で買う
夫・友人・義理の親が贈ると書いた公的な資料は無く、自分で買ってはいけないと書いた寺社の公式もありません。
神社本庁、10の神社庁と、15の寺社(贈り物の記載が無かった12か所と、門戸厄神・多井畑厄除八幡宮・石清水八幡宮)のページを開いた範囲で、「誰から贈るとよいか」に触れた文面は0件でした。記録に無いというだけで、夫や友人が贈ってはいけないという意味ではありません。自分で買うことについては、門戸厄神が自分の身の回りのものを形代にして厄を払うと書き、石清水八幡宮も七色の物を「身に着ける」と書いています。どちらも本人が持つことを前提にした書き方で、人からもらった物でなければならないとは書いていません。
厄年の贈り物はいつ渡すか|決まりは無く、正月から節分が目安
渡す時期を定めた公式は無く、三越伊勢丹は厄年の始まり・誕生日・新年などの節目を挙げ、明確な決まりはないとしています。
三越伊勢丹の解説は「元日から節分までの間に贈る慣習もありますが、明確な決まりはないため相手の都合に合わせて調整してください。」と答えています。寺社の公式で、贈る時期に触れたものは開いた範囲にありませんでした。
前厄の年に贈った記録と、誕生日・正月
群馬県千代田村の記録では前厄の32歳に親元が帯を贈っていて、本厄の年に入る前に渡す形になっています。
『千代田村の民俗』の原文は「三十二になると、前厄だからといって、親元から、厄年帯を寄こす。」です。福岡県遠賀町の記録は2月朔日(1日)に厄をのがれるとして小宴を開いています。神社本庁は数え年を「元日で1つ歳をとる」と説明しているので、この数え方なら正月が厄年の始まりに当たります。誕生日に渡す形は三越伊勢丹が挙げる節目の1つで、県史や寺社の公式には出てきません。
厄払いに行く時期との関係
厄払いにも期限の決まりは無く、神社本庁は早い時期がよいとし、寺の門戸厄神は年明けから節分頃までを挙げています。
神社本庁は「いつまでに行う必要があるといった決まりがあるわけではありません」と書き、門戸厄神は「年明けから、節分頃までに受けられるのが良いとされています。御祈祷は、節分を過ぎましても、一年中毎日10時~16時の間行っております。」と答えています(門戸厄神「よくある質問」)。城南宮は、前もって12月のうちに翌年の厄除の祈祷を申し込む人も増えていると書いています(城南宮「厄除」)。これは厄払いを受ける時期の話で、贈り物の時期を定めたものではありません。厄払いに一緒に行く日に渡すなら、初詣のおすすめ30社寺や神社の参拝方法が下調べに使えます。
のしと表書き|紅白の結び切りに「厄除け祈念」
三越伊勢丹は紅白の結び切りに「厄除け祈念」などと書くとし、阪急うめだ本店はお祝いの意味なら蝶結びとしています。
| 項目 | 三越伊勢丹 | 阪急うめだ本店 | 門戸厄神(寺) |
|---|---|---|---|
| 水引 | 紅白のま結び(結び切り) | 厄除け・厄払いの意味なら紅白5本の結び切り、お祝いの意味なら紅白の蝶結び | 記載なし |
| 厄年の人へ贈る表書き | 厄除け祈念・厄払い祈念・厄除け祈願・厄払い祈願 | 厄除け祈願・厄払い祈念(お祝いととらえるなら御厄除御祝) | 記載なし |
| 厄が明けた人へ贈る表書き | 厄除け御祝・厄払い御祝・御祝 | 厄落とし御祝 | 祝厄払い・祝厄落とし |
| お返しの表書き | 厄除け内祝・内祝 | 内祝・厄除け内祝・厄払い内祝 | 記載なし |
表書きの書き方
厄年の人へ贈るときの表書きは「厄除け祈念」「厄払い祈念」「厄除け祈願」「厄払い祈願」を三越伊勢丹が挙げています。
阪急うめだ本店は「厄除け祈願」「厄払い祈念」に加え、厄除けをお祝いととらえる場合は「御厄除御祝」、厄を気にしている人へは「賀寿御祝」と書き分けています(阪急うめだ本店「厄年の方へ贈る」)。寺の門戸厄神が書くのは厄が明けたあとの表書きで、「祝厄払い」「祝厄落とし」です。
水引は百貨店で書き方が違う
三越伊勢丹は紅白のま結びだけを挙げ、阪急うめだ本店はお祝いの意味なら紅白の蝶結びを使うと書いています。
阪急うめだ本店の原文は「いずれも、厄除けや厄払いの意味なら紅白5本結び切りのしあり。お祝いの意味なら紅白蝶結びのしあり。」です。厄を二度繰り返さないという意味で選ぶなら結び切り、年祝いとして贈るなら蝶結び、という使い分けになります。三越伊勢丹も「地域、時代、慣習、商品によって異なる場合があります。」と添えているので、相手の土地の習わしが分かるなら、そちらに合わせてください。
予算の決まりは無い|授与品は800円から
予算を定めた寺社の公式は無く、三越伊勢丹は目安を5千円〜1万円程度としています。授与品なら800円からあります。
三越伊勢丹の解説は「関係性により差がありますが、一般的な目安は5千円〜1万円程度です。親族や特に親しい相手には数万円の品を選ぶ場合もあります。価格よりも相手への配慮が最も大切です。」と答えています。これは百貨店が示す目安で、調査の数字ではありません。贈り物の額を調べた公的な統計は見つかりませんでした。寺社の授与品は表4のとおり800円から10,000円です。
お返しは必要か|厄が明けたら内祝い
お返しは、厄が明けたあとに内祝いとして贈ると寺のブログと百貨店が書いています。神社本庁には記載がありません。
お返しの表書きと品
お返しの表書きは「厄除け内祝」か「内祝」で、阪急うめだ本店は使ってなくなる品を贈ると書いています。
村松虚空蔵尊は「厄除けの贈り物をいただいた場合、厄が明けたタイミングで『内祝い』としてお返しをするのが一般的です。」と書いています(村松虚空蔵尊「厄年の贈り物」)。阪急うめだ本店は、厄を流すことにつながるので後々残るものではなく、お菓子や洗剤などの日用品を贈るとしています。三越伊勢丹は、地域によっては小豆を使った菓子を内祝いにする風習もあるので習慣を確かめるとよい、と添えています。
厄を分け持ってもらう宴
辞典と神社の公式には、物を返すのではなく、人を招いてもてなし、厄を分け持ってもらう習わしが書かれています。
多井畑厄除八幡宮は「親しい人たちを招いて酒肴でもてなし、自分の厄を持って帰ってもらう。」と書き、ブリタニカ国際大百科事典も、親類や知己を招いて酒盛りや厄払いをすると説明しています。辞典の「厄年」「厄払い」の項に出てくるのは、この宴と、餅や豆を投げて災厄を分ける習わしで、物を贈ることは書かれていません(コトバンク「厄払い」)。遠賀町の「厄祝」の小宴もこの形です。
男性の厄年への贈り物|ベルト・ネクタイ・財布・火箸
男性への品は、寺の門戸厄神がネクタイ・ベルト・財布・火箸・腕念珠を、三越伊勢丹が名刺入れなどを挙げています。
| 品 | 門戸厄神(寺) | 三越伊勢丹 | 授与品の例 |
|---|---|---|---|
| ネクタイ | 挙げている | 挙げている | ― |
| ベルト | 挙げている | 挙げている | 門戸厄神 厄除ベルト 10,000円 |
| 財布 | 挙げている | 挙げている | 門戸厄神 厄除財布 4,000〜10,000円 |
| 火箸 | 挙げている | ― | 門戸厄神 厄除火箸 2,000〜5,000円 |
| 腕念珠 | 挙げている | ― | 門戸厄神 厄除腕念珠 2,000円・6,000円 |
| ループタイ・定期入れ・名刺入れ | ― | 挙げている | 門戸厄神 厄除パスケース 3,000円 |
| 御神矢 | ― | ― | 石清水八幡宮 特別厄除御神矢 5,000円 |
寺と百貨店が挙げる品
ネクタイ・ベルト・財布の3つは、寺の門戸厄神と三越伊勢丹の両方が男性向けに挙げている品です。
門戸厄神の原文は「男性への贈り物には、ネクタイ、ベルト、財布、火箸、腕念珠など。」、三越伊勢丹は「男性向け ネクタイ、ループタイ、ベルト、定期入れ、名刺入れ、財布」です。ネクタイとベルトは長いものに当たります。男性にうろこ模様や七色を勧める文面は、門戸厄神のページでは女性の言い伝えとして書かれていて、男性の欄にはありません。
火箸・御神矢など寺社の縁起物
寺社の縁起物では、門戸厄神の厄除火箸が42歳の本厄の贈り物として、石清水八幡宮には特別厄除御神矢があります。
門戸厄神は火箸を「火箸は神のよりしろと考えられています。男性42才を中心とする本厄の贈り物として最適です。」と説明しています。石清水八幡宮の特別厄除御神矢は長さ70.5cmで、男女を分けずに「厄年の方の為に」調整したと書かれています。厄が明けたら、火箸もお札やお守りと一緒に納めると門戸厄神は案内しています。
男性へ贈る習わしの記録は見つからない
男性の厄年に縁起物を贈る習わしを書いた県史・町誌・辞典は、当サイトが探した範囲では見つかりませんでした。
男性の厄年の記録に出てくるのは、贈るより落とす・振る舞う習わしです。その検証は男性の厄年の早見表の贈り物の節にまとめています。男性の年齢と社寺ごとの違いも同じ記事で比べられます。
お守りを贈る・代わりに祈祷を受ける
厄除けのお守りは贈ってよいと寺の門戸厄神が書き、本人の代わりに家族が祈祷を受けられる寺社もあります。
厄除けのお守りは贈ってよい
門戸厄神は贈り物として「厄除けのお守りなどもよいでしょう」と書き、三越伊勢丹もお守りやお札を添えるとしています。
門戸厄神は、厄除けのお守りは「厄年でなくても持って良いです。」とも答えています。贈り物としてお守りを挙げているので、贈る側が受けてきて渡す形になります。村松虚空蔵尊のブログは、代理でお札やお守りを授かった場合は本人に渡して丁寧に祀ってもらうよう書いています。受けるなら、相手の住む土地の氏神さまという選び方もあります(氏神チェック)。厄除けで知られる社寺は厄除けのご利益で神社を探すから探せます。
代理の祈祷と郵送
代理で祈祷を受けられると書くのは門戸厄神・成田山新勝寺・立木観音・あびこ観音で、郵送を受ける寺社もあります。
| 寺社 | 寺/神社 | 受け方 | 公式の書き方 |
|---|---|---|---|
| 門戸厄神東光寺 | 寺 | 代理 | 「代理参拝していただいても結構です。その方の、住所、氏名、生年月日、願事で、御祈祷できます。」 |
| 成田山新勝寺 | 寺 | 代理 | 「ご本人に代わってご家族や代理人がお受けいただくこともできます。」 |
| 立木観音 | 寺 | 代理 | 「代参してもらうことが可能です。」 |
| あびこ観音 | 寺 | 代理 | 「ご本人様でなくてもお申込みいただけます。」 |
| 川崎大師 | 寺 | 郵送 | 「ご祈祷したお護摩札の郵送・配送を受け付けています。」 |
| 寒川神社 | 神社 | 郵送 | 「郵送等による御祈祷を承っております。」 |
| 岡寺 | 寺 | 郵送 | 「郵送でのお申し込みも受け付けております。」 |
出どころは成田山新勝寺「厄除け」、立木観音「よくある質問」、あびこ観音「Q&A」、川崎大師「厄除け」、寒川神社「ご祈祷」、岡寺「厄除け」です。村松虚空蔵尊は、代理を受け付けていない寺社もあるので事前に確かめるよう書いています。
贈ってはいけない物を書いた公式は無い
厄年の人に贈ってはいけない物を書いた寺社の公式と百貨店の公式は、当サイトが開いた範囲にありませんでした。
櫛や刃物、ハンカチを避けるという話は、上位22本のうちギフトの情報サイト2本に出てくるだけで、出典は示されていません。厄年に控えることを公式ごとに比べた内容は厄年にやってはいけないことで扱っています。
よくある質問
Q. 厄年の贈り物は前厄・本厄・後厄のどの年に贈りますか?
A. 決まりを書いた公式は、当サイトが開いた範囲にはありません。記録では、群馬県千代田村が前厄の32歳、愛媛・秋田・福岡が33歳です。3年のうち1回贈れば足りるのか、毎年贈るのかを書いた資料も見つかりませんでした。
Q. 同い年の友人に厄年の贈り物をしてもよいですか?
A. 全国の決まりはありません。愛媛県津島町御槇には、同い年どうしは勝ち負けが生じるとして、年祝いに行ったり贈答をしたりしないという記録が『愛媛県史』にあります。1つの土地の習わしで、ほかの土地に当てはまるかは分かりません。
Q. 七色とは何色ですか?
A. 色を定めた辞典や県史はありません。門戸厄神と石清水八幡宮は色の名前を書いていません。村松虚空蔵尊のブログは「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」の虹色を指すと説明しています。
Q. 厄年の贈り物にネックレスが選ばれるのはなぜですか?
A. 長いものに当たるからです。三越伊勢丹は女性向けの品にネックレスを挙げています。真珠と厄年を結びつけた寺社の公式や辞典は、当サイトが開いた範囲にはありませんでした。
Q. 厄年ではない家族が、代わりにお守りを受けてきてもよいですか?
A. 受けてきてかまいません。門戸厄神は代理参拝でも祈祷できると答え、お守りは厄年でなくても持ってよいとしています。代理の扱いは社寺で違うので、受ける社寺の案内を先に確かめてください。
Q. もらった厄除けの品は、厄年が終わったらどうしますか?
A. 寺の門戸厄神は、厄が明けたらお札・お守り・火箸を古札納所へ納めてお礼参りをすると案内しています。財布やネックレスなどの品物をどうするかを書いた公式は見つかりませんでした。お守りの返し方は厄年の早見表のお守りの節にまとめています。
まとめと参考にした資料
厄年の女性への贈り物は長いもの・うろこ模様・七色が挙がりますが、決まりは無く、贈らなくてもかまいません。
県史と町誌で記録が集まるのは、33歳の厄年(群馬県は前厄の32歳)に実家の親や兄弟が女性へ贈る帯です。うろこ模様は辞典と愛媛・群馬の記録にあり、七色は寺の門戸厄神と石清水八幡宮の授与品、百貨店の説明に出てきます。渡す時期は正月から節分が目安とされますが、定めた公式はありません。のしは、三越伊勢丹の書き方では紅白の結び切りに「厄除け祈念」で、お返しは厄が明けてからの内祝いと寺のブログと百貨店が書いています。相手が厄年かどうかは厄年の早見表で、厄払いを受ける神社は氏神の調べ方や参拝プランから探せます。
